AIの推し銘柄は当たるのか、9月は「予測AI」で検証する
この企画は、AIが選んだ日本株で実際にお金を動かし、市場に評価させる年間検証です。9月からは選定を担うAIを切り替え、判断の中身そのものを記事の主役にします。
・テーマ:AIが選ぶ銘柄は市場に勝てるかを、ルール固定で1年検証
・期間:2026年1月〜12月、毎月1回運用
・やり方:月初に原則3銘柄を買い、途中で売らず月末に一括売り
・条件:新NISA(成長投資枠)+SBI証券+S株中心
・記録:毎月「選定理由→運用→損益→振り返り」を公開し年末に総決算


そして9月から、もう一つ大きな変化があります。銘柄選びに使うAIを「SENTEI」という予測エージェントに切り替えました。ChatGPTに『どの株がいいと思う?』と聞くフェーズから、専用ロジックを組んだAIエージェントに『1か月後に上がりやすい構成を出して』と依頼するフェーズへ進んだ形です。生成AIが投資判断にどこまで使えるのか。9月号ではその「思考プロセス」を、できるだけそのまま見せていきます。
AIがNXHD(9147)を選んだ理由が、想像以上にロジカルだった
今回、AIは東証市場全体を入口に候補を探索する過程で「クボタ(6326)」という有力候補を一度は評価しながら、最後に外しています。理由は「上がりそうだから」ではなく「1銘柄がコケたときにポートフォリオ全体が崩れるから」でした。人間の勘に近いようで、実は数式で判断している。この温度差が、今回いちばん面白いところです。
詳しい経緯はこのあと3章でじっくり検証しますが、まずは「AIがどんな銘柄を、どんな理由で選んだか」という全体像から見ていきます。
補足:AIエージェント(AI agent)とは、単に質問に答えるだけでなく、あらかじめ与えられたルールや目的に沿って自律的に情報を集め、判断まで行うAIの仕組みを指します。今回のSENTEIは、銘柄選定という一つの仕事に特化して設計されたAIエージェントです。
9月の運用データと予算配分(大塚HD・花王・NXHD)
まず今回の運用条件を数字で確認します。9月1日の買付を起点に、月末まで一切売買しない「バイ・アンド・ホールド」方式です。
| 銘柄 | 8/31終値 | 株数 | 予算確保額 | 予算比 |
|---|---|---|---|---|
| 大塚HD(4578) | 12,250円 | 2株 | 25,235円 | 25.24% |
| 花王(4452) | 3,641円 | 9株 | 33,752円 | 33.75% |
| NXHD(9147) | 5,773円 | 5株 | 29,731円 | 29.73% |
| 現金残 | ― | ― | 11,282円 | 11.28% |
投資予算は10万円、買付時の成行バッファ(成行注文が終値より高く約定するリスクを見込んだ余裕分)を含めた確保額の合計は88,718円です。3銘柄合計16株、現金比率は11.28%でスタートします。
SENTEI Score(100点満点)は、業績や需給、地合いなど複数の材料がどれだけ揃っているかを示す指標であり、株価上昇の確率を意味する数字ではありません。RR(リスク・リワード)は想定上昇幅を想定下落幅で割った比率で、1.5以上が良好とされる目安です。
3銘柄のAIが期待する役割は、それぞれ異なります。大塚HDは「材料の強さ」、花王は「業績改善と安定トレンド」、NXHDは「需給改善と下落耐性」。1つの勝ちパターンに賭けるのではなく、性格の違う3つの勝ち筋を組み合わせる構成になっています。
SENTEIは正しかったか:クボタを外してNXHDを選んだ理由
今回のAI予測エージェント「SENTEI」の判断で、いちばん検証しがいがあるのがこの章です。AIは当初、クボタ(6326)を第3の候補として高く評価していました。それを土壇場でNXHDに切り替えています。何が起きたのかを、AIの計算プロセスに沿って見ていきます。
①大塚ホールディングス(4578):AIの読みは「業績上方修正がすでに株価に反応している」
大塚HDの2026年7月期・第2四半期決算では、通期の最終利益予想が2,650億円から3,550億円へ、率にして+34.0%引き上げられました。この決算を受けて、7月31日に11,100円だった株価は8月31日に12,250円まで上昇。1か月で約+10.4%です。SMBC日興・BofA・モルガン・スタンレー・JPMorganの4社が軒並み目標株価を引き上げており、AIはこの「決算→株価反応→アナリスト評価引き上げ」という一連の流れを、最も持続しやすい材料タイプ(A1)と判定しました。信用買残も7月末の71,300株から8月21日時点で58,500株へ約18%減少しており、目先の売り圧力は和らいでいるようです。
②花王(4452):AIの読みは「売上より利益の伸びが大きい=収益性そのものの改善」
花王は8月5日の決算で、上期売上高が前年比+7.8%だったのに対し、営業利益は+38.5%と大きく上回りました。AIはこの差を「単なる増収ではなく利益率の改善」と評価しています。株価は7月末の3,268円から8月末の3,641円まで約+11.4%上昇済みで、JPMorganは目標株価を3,900円から4,000円へ、BofAは中立から買いへ格上げしています。一方で信用買残は7月末の299,300株から362,000株へ約21%増えており、AIはこれを唯一の弱点として記録していました。すでに1か月で1割超上昇している分、織り込みがどこまで進んでいるかは9月に問われる点です。
③NIPPON EXPRESSホールディングス(9147):AIが最終的にクボタより高く評価した銘柄
NXHDは8月7日の決算で通期最終利益予想を600億円から700億円へ上方修正(+16.7%)。決算翌営業日に株価は+7.21%と反応し、その後も一定期間上昇が続きました。AIが特に注目したのは信用需給の変化です。信用買残は7月末の127,500株から8月21日時点で61,500株へ、約52%という大きな減少を記録しています。さらに発行済株式の7%にあたる自社株買いが11月末まで継続中で、9月の運用期間中もこの買い需要が残ります。ただし平均アナリスト目標株価(約5,253円)に対し8月31日の株価(5,773円)はすでに約9.9%上回っており、年初来高値まで残り0.35%という水準です。材料は強いものの、株価にかなり織り込まれている状態だとAIは記録しています。
クボタは業績上方修正・自社株買い・強いモメンタムを持ち、単純な上昇力ではNXHDより評価されていました。しかしクボタは値動きの荒さを示す指標(β)が約1.51と大きく、過去12か月の最大下落月では約-22.6%というブレを記録しています。
AIはここで「もしこの銘柄が最悪のケースで大きく下落したら、3銘柄合計の損益はどうなるか」という仮想テストを実行しました。クボタを組み込んだ場合、他の2銘柄が想定通り上昇しても合計はマイナスになる計算です。一方NXHDを組み込んだ場合は、NXHDが最も弱いケースで下落しても、3銘柄合計はプラスを維持できる計算になりました。
つまりAIは「いちばん上がりそうな株を3つ並べる」のではなく、「1つが崩れてもポートフォリオ全体が壊れない組み合わせ」を優先したことになります。これが正しかったかどうかは、9月30日の実際の騰落率で答え合わせをします。
この判断の当否を測る一番わかりやすい方法は、9月末に「クボタを持っていたら実際どうなっていたか」を仮想的に振り返ることです。この比較は、来月の記事で必ず扱います。
市場は何を考えていたか:日経平均66,000円台での船出
SENTEIが銘柄を選んだ8月31日時点、日本株全体の地合いをAIは「+9・リスクオン」と判定していました。これは市場環境が株を買いやすい状態にあることを示す社内スコアで、TOPIXや日経平均の移動平均線との位置関係、米国株、為替、金利など12項目を点数化した合計値です。
実際の市場を見ると、8月中旬には日経平均が3日続伸し6万8,000円台を回復する場面があり、8月29日にはTOPIXが7営業日続伸で最高値を更新するなど、月を通して底堅い動きが目立ちました。ただし8月31日の大引けは、日経平均が前週末比93円63銭安の66,311円93銭、TOPIXは9.58ポイント高の4,156.29ポイントとやや対照的な結果でした。米国の金利上昇観測とハイテク株安を受けて、東京市場でも半導体関連中心に売りが先行した一日だったようです。日経平均が下げた一方でTOPIXが上げているのは、値がさ株の一部が売られる一方、市場全体では買われた銘柄の方が多かったことを示しています。
SENTEIが選んだ大塚HD・花王・NXHDは、いずれも半導体やハイテク中心のテーマ株ではなく、医薬品・日用品・物流という個別の業績材料を軸にした銘柄です。この日の値がさハイテク株安の影響を、比較的受けにくい構成だった可能性があります。
この実験で見えてきたこと:AIは「勝てる株」ではなく「壊れない構成」を探していた
今回、SENTEIの判断プロセスを追っていちばん驚いたのは、AIが「どの株が一番上がるか」という一点勝負の発想をしていなかったことです。むしろ終始一貫して考えていたのは「この3銘柄のうち1つがコケたとき、残り2つで持ちこたえられるか」という、ポートフォリオ全体の生存戦略でした。
クボタを外した判断がまさにそれです。単体の上昇力なら軍配が上がっていたはずの銘柄を、AIは「下振れしたときの傷の深さ」を理由に見送りました。これは人間の投資家がよく口にする「リスク管理」という言葉を、AIが計算式として愚直に実行した結果だと言えそうです。正しい判断だったかは9月末にならないとわかりませんが、少なくとも「AIが何を根拠に判断したか」がここまで言語化されている点は、これまでのChatGPTによる選定とは異なる手応えがありました。
生成AIを投資判断に使う、と一言でいっても、その中身は「なんとなく良さそうな銘柄を教えてもらう」から「明文化されたルールに沿って機械的に絞り込む」まで幅があります。SENTEIは後者に近い設計です。この違いが実際の運用成績にどう表れるのか、9月30日の答え合わせで見ていきます。
3銘柄それぞれの騰落率/ポートフォリオ全体の税引後損益/SENTEI Score(84・80・87)と実際の成績の関係/材料ランクA1が1か月持続したか/クボタとNXHDの実際の騰落率の比較。これらを来月の記事で一つずつ検証します。
参考
ソニーFG下落 「金融庁、ソニー生命立ち入り検討」報道(31日の株式市場)-日本経済新聞
日経平均大引け:前週末比93.63円安の66311.93円-財経新聞
日本市場レポート 2026年8月29日|宮野宏樹
注意点
この記事は投資助言ではありません。実際のデータに基づく検証記事であり、将来の運用成績を保証するものではありません。特定銘柄の売買をすすめるものではなく、AIによる銘柄選定プロセスの記録・観察を目的としています。




